転職で年収を上げた営業の共通点——平均+22万円の内訳を分解する
マイナビ2025年版の転職後平均年収+22万円データを軸に、年収が上がった職種×業界の組み合わせ、上がった人の共通行動3つ、上がらなかったパターン、転職前3ヶ月の準備を解説する。
編集部
迷ってていい。でも、これだけは知っておいて。
転職で年収が上がる人と上がらない人は、スキルの差よりも「準備の差」で決まることが多い。
マイナビの2025年版転職動向調査によると、転職後の平均年収増加は**+22万円**。この数字を見て「転職したら年収が上がる」と解釈するのは早合点だ。
+22万円の数字を正直に読む
まず、この数字の背景を正確に理解しよう。
マイナビ2025年版のデータは、転職者全体の平均を表している。年収が上がった人も、下がった人も、横ばいの人も含めた平均だ。
転職動向調査によると、転職理由の1位は「給与が低い」で25.5%(マイナビ調査)。つまり、4人に1人以上は年収アップを動機に転職を考えている。しかし実際に年収が上がる人は全体の一部に偏っている。
なぜ差が生まれるのか——それを知ることが、この記事の核心だ。
年収が上がりやすい職種×業界の組み合わせ
営業職の転職で年収が上がりやすいのには、パターンがある。
有形商材 → 無形商材(SaaS/HR/広告)
有形商材(メーカー・商社・小売)から無形商材(SaaS・HR Tech・広告・コンサル)への転換は、年収アップの王道ルートだ。
有形商材は在庫・物流コストがかかるため、粗利率が低く、営業への報酬に回せる原資が限られる。無形商材は粗利率が高く(SaaSは70〜80%)、インセンティブの設計余地が大きい。
SaaS企業のAE(アカウントエグゼクティブ)は、経験3〜5年で500〜800万円台が視野に入る。有形商材営業の中堅と比べると100〜200万円のギャップになることがある。
中小企業 → 成長期スタートアップ・中堅SaaS
中小企業から成長期のスタートアップへの転職は、年収増加よりも「成長速度」と「ストック(ストックオプション)」が魅力になるケースが多い。ただし年収水準そのものが上がるケースも多い。
ポイントは「成長期」であること。アーリーステージ(シード・シリーズA前後)は年収が低めに設定され、ストックオプション比率が高い。シリーズB以降・ARR10億円以上の成長フェーズなら、年収水準も安定してくる。
BtoC → BtoB
BtoC営業(保険・不動産・車)からBtoB営業(法人向けサービス・SaaS)への転換も、年収が上がるパターンとして多い。
BtoCは顧客単価が低く、件数で稼ぐモデルが多い。BtoBは単価が高く(年間数百万〜数千万円の商談も珍しくない)、インセンティブが大きくなる。また、BtoB営業の経験はSaaS企業からも高く評価される。
年収が上がった人の共通行動3つ
転職エージェントへのヒアリングや実際の転職者の声から見えてくる、年収アップ組の共通点を3つ挙げる。
1. 数字で実績を語れた
「頑張りました」「チームに貢献しました」ではなく、「四半期の新規受注目標を3期連続で110%達成しました」「担当顧客のチャーン率を15%から8%に改善しました」という形で実績を語れた人が、内定時の年収交渉で優位に立てる。
採用担当者は「この人を採用したら何をもたらすか」を想像しながら面接している。数字があると、その想像が具体的になる。
2. 転職理由が前向きだった
転職理由の語り方で内定率は変わる。「今の会社が嫌だから逃げてきた」と受け取られると、採用側は「うちの会社でも同じことが起きるかも」と感じる。
年収が上がった転職者に多いのは、現職への不満ではなく「次に何を実現したいか」を中心に語れていた人だ。「営業の現場経験を積んだ上で、データを使って組織全体を動かす仕事をしたい」のように、志向が明確な人は採用側の印象が違う。
3. 複数のエージェントを使い、市場価値を確認した
1社のエージェントだけを使うと、そのエージェントの保有求人・交渉力の範囲でしか結果が出ない。年収が上がった人の多くは、2〜3社のエージェントを並行利用して「自分の市場価値の相場」を確認した上で交渉に臨んでいる。
エージェントに提示される年収レンジが低い場合は、「他のエージェントではこの水準を提示された」と伝えることで引き上げを交渉できるケースもある。
上がらなかった人のパターン
一方で、転職しても年収が上がらなかった人にも共通点がある。正直に書く。
「なんとなく転職した」
明確な目標がないまま転職活動をすると、「良さそうな求人があったから応募する」という受け身の転職になりやすい。結果として年収交渉の軸がなく、提示された年収をそのまま受け入れることになる。
実績を感覚でしか語れなかった
「それなりに成果を出してきた」という自己評価と、採用側が「この人はうちで何ができるか」という評価の間にギャップが生まれる。数字なしで実績を語ることの弱さは、面接後の年収交渉の弱さに直結する。
1社目の内定をそのまま受けた
転職活動を急いでいると、最初の内定を「これ以上探すのが面倒」という理由で受け入れてしまうことがある。年収が上がった人の多くは、複数社を比較した上で選んでいる。
転職前に準備する3ヶ月のロードマップ
「転職したい」と思ってからすぐに動くのではなく、3ヶ月の準備期間を取ることを勧める。
第1ヶ月——自己棚卸しと市場調査
まず現職での実績を数字で整理する。KGI(売上・受注数)とKPI(アポ数・提案数・CVR)の両方を月次・四半期単位で記録する。
同時に、転職市場のリサーチをする。興味のある職種・業界の求人を20〜30件眺め、求められるスキル・経験・年収レンジを把握する。「自分の市場価値がどのくらいか」を感覚として掴む。
第2ヶ月——スキルと接点を作る
志望する職種に必要なスキルを意識的に学ぶ。SaaS志望ならSFAツール・MEDDIC・SaaS基礎知識。営業企画志望ならExcel/スプレッドシートの集計・資料作成力。
同時に、エージェントに登録して初回面談を受け、フィードバックをもらう。「市場でどう見えているか」を外部の目で確認する段階だ。
第3ヶ月——本格的な転職活動
エージェント2〜3社を活用して求人に応募する。書類通過率・面接結果を記録し、フィードバックから改善を繰り返す。
内定が出たら年収交渉を必ず行う。提示年収を黙って受け入れる必要はない。「前職では〇〇万円で、今回はこういった実績がある。〇〇万円でお願いできますか」と数字で交渉する。
転職は手段であって目的じゃない。でも年収が上がることは、働くモチベーションを正直に変える。
迷うのは自然だ。準備が整ったとき、動けばいい。
参考文献・出典
- マイナビ「転職動向調査 2025年版」(転職後平均年収+22万円、転職理由1位「給与が低い」25.5%)
- JACリクルートメント「営業職種別平均年収データ」
- xenoBrain「SaaS企業年収ランキング 2024年版」
よくある質問
- Q転職すれば必ず年収は上がりますか?
- 必ずとは言えません。マイナビ調査では転職後に年収が上がった人は全体の約4割という調査もあります。業種・職種・タイミング・準備の差で結果が大きく変わります。平均+22万円は上がった人・下がった人・横ばいの人を含む全体の平均です。
- Qどの業界・職種に転職すると年収が上がりやすいですか?
- IT・SaaS・HR Techなどの無形商材営業は、成長市場かつ利益率が高いため、年収水準が高い傾向があります。SaaS企業のフィールドセールスや営業企画への転換は年収アップのルートとして現実的です。
- Q転職理由が「給与が低い」では採用されませんか?
- 「給与が低い」という事実を伝えるだけでは弱いです。なぜ今の企業では上がらないのか(市場との乖離・評価制度の限界)と、次の企業で何を達成したいかをセットで語れると、採用側には誠実に映ります。転職理由は「現職への不満」ではなく「次で実現したいこと」に軸足を置いて語りましょう。
- Q転職エージェントは複数使った方がいいですか?
- はい。エージェントによって保有求人・担当者の質・対応業界が異なります。2〜3社を並行利用して求人を比較し、自分に合った求人を選ぶのが効果的です。ただし、同じ企業に複数エージェント経由で応募しないよう管理が必要です。
マイ
29歳インサイドセールス
文系・非IT出身でCSからISに転職。迷いながら動いて気づいたことを、等身大で伝える。