営業企画へのキャリアチェンジ——現場営業から転身する人が増えている理由

営業企画の平均年収847万円、転職市場での評価ポイント、失敗しがちなパターンをハルが自分の経験をもとに解説。

W

編集部


俺が営業企画に移ったのは、33歳のときだった。

それまで5年間、フィールドセールスとして働いた。成績は悪くなかった。でも、ある時点から「自分が動いているエリアにしか影響を及ぼせない」という限界を感じ始めた。

チームの仕組みを変えたい。営業全体の成果を押し上げる設計をしたい——そういう気持ちが強くなって、営業企画に移った。

今振り返ると、移行して正解だった。でも想像していたより全然難しかったとも思っている。今日はその両方を正直に話す。

なぜ「営業→営業企画」の転換が増えているのか

背景には大きく2つの変化がある。

1つ目は、営業の高度化だ。

AIツールの普及・SFAの精度向上・インサイドセールスモデルの定着によって、「営業プロセス全体を設計できる人材」の需要が増している。現場経験があり、かつ戦略的思考ができる人を企業は求めている。その需要の答えとして、現場営業→営業企画という流れが生まれている。

2つ目は、年収の魅力だ。

営業企画の平均年収は847万円、営業推進は872万円(JACリクルートメント調査)。一般的なフィールドセールスの年収帯と比べて、経験を積んだ段階では明確に上になるケースが多い。「稼ぎたいなら現場」という時代から、「設計できるなら企画の方が高い」という時代に変わってきた。

ただし、年収だけを目的に転職すると面接で見抜かれる。面接官は「この人は現場課題から動機付けられているか」を見ている。

営業企画に必要なスキルの三角形

現場営業→営業企画への移行でよく誤解されるのが「営業経験があれば企画もできる」という思い込みだ。

営業企画に必要なのは、以下の三角形だ。

       営業現場の経験
      /               \
 データ分析   ×   戦略的思考

営業現場の経験: 「なぜこの施策が現場に刺さるのか」「このプロセスのどこにボトルネックがあるのか」は、現場経験なしには設計できない。数字を見て正しい仮説が立てられるかどうか、現場経験が精度を決める。

データ分析: KPI設計・ファネル分析・予算策定はすべて数字を扱う。Excelでのピボット集計・CRMからのデータ抽出・BIツールでのダッシュボード作成——これらが実務スキルとして求められる。「データを見た」ではなく「データから意思決定した」経験が重要だ。

戦略的思考: 施策を「なぜ今この施策なのか」「他の選択肢と比べてなぜこれか」という論理で語れるかどうか。現場では「やってみる」で動けるが、企画は「なぜやるか」を関係者全員に納得させる必要がある。

三角形の一辺でも欠けていると、企画として機能しなくなる。

転職市場での評価——何をどう語るか

営業企画の求人では、以下の経験が明確に評価される。

評価される経験①: 数字で語れる現場経験

「担当エリアで前年比130%を達成した」ではなく、「チームのアポ率が低下していた原因をCRMデータで分析し、ターゲットセグメントを変更した結果、チーム全体のアポ率が2.3%から4.1%に改善した」のように、問題発見→分析→施策→結果のセットで語れる経験。

評価される経験②: 組織横断での調整経験

営業企画は「現場・マーケ・経営陣」の三者に挟まれる仕事だ。複数のステークホルダーに働きかけた経験、利害が対立する場面で折衝した経験は、直接評価に繋がる。

評価される経験③: ツールの活用経験

SFA(Salesforce等)のレポート作成・MA連携の管理・ExcelでのKPIダッシュボード構築——これらが「自分でやった」経験として語れると、即戦力感が出る。

年収847万円への道のり

「847万円」は平均値だ。全員が最初からここに到達するわけではない。

現実的なステップは以下の通りだ。

フェーズ年収目安主な要件
転職直後(0〜2年)500〜650万円現場経験 + データ基礎
中堅(3〜5年)650〜800万円施策の実績 + チームマネジメント経験
シニア(5年以上)800〜950万円超全社営業戦略の設計・実行実績

転職直後に「847万円」を期待して入社し、現実とのギャップに失望するケースがある。これは誤解だ。847万円は「経験を積んだ段階での市場価値」であって、転職直後の初任給ではない。

失敗しがちなパターン3つ

転職した後に「こんなはずじゃなかった」と言う人が一定数いる。その共通点を正直に書く。

パターン1: 「現場を知っているから俺ならできる」という過信

営業企画の難しさは「自分が実行しない」ことにある。施策を設計して、現場に動いてもらって、結果を見てまた設計する——このサイクルで成果を出すには、説得力・巻き込み力・信頼構築が必要だ。現場経験があっても、「人を動かす設計」は別スキルだ。

パターン2: 数字に強くないまま転職する

「数字は苦手だけど営業経験でカバーできる」と思って移った人が、KPI設計や予算策定の場面で苦労するケースを何度も見た。Excelのピボット・基本的な統計の読み方・ダッシュボードの構築は、転職前に習得しておくことを強く勧める。

パターン3: 現場への影響力を過小評価する

企画が設計した施策が現場に受け入れられない、という問題が起きる。これは「企画が正しいことを言っている」かどうかではなく、「現場の課題認識と施策が合っているか」「施策の意図が現場に伝わっているか」の問題だ。現場目線を失わずに企画を立て続ける難しさは、やってみて初めてわかる。

移行前にやっておくべきこと

転職前に動いておくことで、移行後の立ち上がりが変わる。

  1. CRMデータを自分で引いて分析する習慣を作る: 今の職場で可能なら、営業データを自分で集計・分析する機会を作る
  2. 施策提案の経験を積む: 「チームの成果を上げるために提案した施策」を1つでも実績として持っておく
  3. Excelの集計・グラフ作成スキルを固める: 最低限、ピボットテーブル・VLOOKUP・グラフの編集は確実に使える状態にする
  4. 「なぜその施策か」を言語化する練習をする: 日々の仕事の中で、施策の選択理由を言葉にする習慣をつける

俺が転職してよかったと思うのは、「一人ではなく組織全体で成果を出す」面白さに気づいたからだ。でもそれは、現場5年間の経験があったから言えることでもある。

移行を考えるなら、今いる現場で「組織全体の課題」を見ようとする意識を持ち始めるのが第一歩だ。

参考文献

  • JACリクルートメント「職種別年収データ」(営業企画847万円・営業推進872万円)
  • リクルートワークス研究所「営業職の仕事実態調査」2019年
  • マイナビ「転職動向調査2025年版」(転職後+22万円)

よくある質問

Q営業企画に転職するのに何年の営業経験が必要ですか?
明確な基準はありませんが、市場では3〜5年の現場営業経験がある人が評価されやすいです。「自分で目標を持ち、達成したことがある」「営業プロセスの課題を自分で発見した経験がある」ことが重視されます。経験年数より『何を学んだか』の方が重要です。
Q営業企画はどんな仕事をするのですか?
主な業務は、営業戦略の立案・KPI設計・予算策定・ツール導入管理・データ分析・営業チームへの施策展開です。現場が動きやすい環境を整える『縁の下の力持ち』的な役割で、実行は現場営業が担います。
Q文系・理系の違いは関係しますか?
大きくは関係ありません。ただし、データ分析(Excel・SQL・BIツール)の扱いに慣れていることは実務で直結します。文系でも統計の基礎やスプレッドシートの応用レベルは最低限抑えておくと転職活動で差がつきます。
Q営業企画と営業推進の違いは何ですか?
明確な定義は会社によって異なりますが、一般的に『営業企画』は戦略立案・上流の設計が中心で、『営業推進』は施策の実行管理・現場サポートが中心です。JACリクルートメントのデータでは営業推進の平均年収(872万円)が企画(847万円)をやや上回る傾向があります。
Q営業企画への転職で有利なスキルは何ですか?
①Excelによる集計・ダッシュボード作成、②CRM/SFAのデータ活用経験、③社内ステークホルダーとの調整経験(特に上位職との折衝)、④数字を使った報告・提案の実績です。これらを面接で具体的なエピソードとして語れると評価が上がります。

ハル

35歳

営業企画マネージャー

テレアポ300件/日の時代から、AI活用で月次戦略を回す立場へ。どん底を知っているから、リアルな話しかしない。