営業キャリアの地図——20代・30代・40代でやるべきことが違う理由
年代別のキャリア戦略は明確に違う。20代はスキルの種まき、30代は選択と集中、40代は価値の再定義。転職率データと年収データをもとにジンが語る、年代別の本質的な戦略。
編集部
長くやったから、言える。
20年営業をやってきて、同僚や後輩が節目ごとに悩む姿を見続けてきた。「転職すべきか」「管理職を受けるか」「このままでいいのか」——みんな同じ場所で迷う。
でも正直に言う。20代・30代・40代でやるべきことは、根本的に違う。 同じ悩みに見えても、年代によって取るべき戦略が違う。それを混同したまま動くから、後悔する。
今日は、地図を描く。
20代:「スキルの種まき」期——焦りは正しい
20代男性の転職率は13.4%(マイナビ2025年転職動向調査、全体転職率7.2%の約2倍)。これだけ多くの20代が動いている。
この数字をどう見るか。俺は「正しい焦りが動かしている」と思っている。
20代でやるべき唯一のこと:レパートリーを増やす
20代は「何で稼ぐか」を決める時期ではなく、「何を持っているか」を増やす時期だ。
- 担当業界の知識(SaaS・メーカー・人材・金融など)
- 営業プロセスの全体像(新規開拓・商談・クロージング・CS)
- ツールの扱い(CRM・MA・分析ツール)
- コミュニケーションの型(電話・対面・オンライン・大人数)
これらを複数持つことで、30代以降に「専門家」として選ばれるための素材になる。
逆に言うと、20代で「一つの業界・一つの会社・一つのやり方」に縛られすぎると、30代で市場に出たときに「あなたには何ができますか?」に答えられなくなる。
転職は「逃げ」ではなく「情報収集」
20代での転職を「根性がない」と言う管理職がいる。古い。
転職することで「他社での評価」「市場における自分の価値」「別の業界の営業スタイル」を知ることができる。これは現職に留まり続けても得られない情報だ。
転職率が13.4%の時代に、20代で一度も市場に出ないのはむしろリスクだと思っている。
20代が気をつけるべき落とし穴
「年収が上がった=成功」と思いすぎないこと。20代の転職で年収が上がることはある。でもそれが「スキルが評価された」のか「業種の相場が高いだけ」なのかを見極めないと、30代で苦しくなる。
会社のブランドや年収より、「自分がここで何を身につけられるか」を優先する視点が20代には必要だ。
30代:「選択と集中」の転換期——一番勝負どころ
転職後平均年収+22万円という数字がある(マイナビ転職動向調査2025年版)。この恩恵を最も受けやすいのが30代だ。
なぜか。専門性が市場で評価できるレベルになり、かつ管理職前後のポジションで市場流動性が高いからだ。
30代前半:30歳の棚卸しをやれ
30歳になったとき、一度立ち止まって「自分が持っているスキルセット」を紙に書き出してほしい。
- 今まで担当してきた業界・顧客の種類
- 最も成果を出した経験(具体的な数字で)
- 使えるツール・手法
- 自分が「好きでやっていたこと」と「嫌だったこと」
この棚卸しをしないまま30代を走ると、35歳で「何者かわからない営業」になる。それが一番まずい。
30代中盤:専門家か管理職か、を決める
30代中盤になると、多くの人が二択を迫られる。
専門家路線(個人スキルで稼ぐ)
- 営業企画・RevOpsなどの職種専門家
- エンタープライズセールスのシニアIC(Individual Contributor)
- セールスエンジニア・プリセールスなどの技術×営業
管理職路線(組織で稼ぐ)
- チームマネージャー・部長
- 事業開発リード
- VP of Sales方向
どちらが正解かは人による。でも「どちらでもいい」という状態のまま35歳になると、どちらの道でも中途半端に見える。
俺が見てきた限り、「専門家路線を明確に選んで深めた人」は30代後半で市場価値が急上昇することが多い。
参考:職種別の年収水準
- 営業企画:平均847万円(JACリクルートメント実績値)
- 営業推進:平均872万円(同)
- カスタマーサクセス:平均543万円(業界調査)
管理職になると年収が上がると思いがちだが、プレイングマネージャーの87.3%が実務を抱えたままという実態(リクルートワークス研究所2019年)を見ると、マネージャーになっても年収の上がり幅は期待ほど大きくないケースも多い。
30代後半:転職するなら「今」の理由
転職市場の現実として、40代に入ると書類選考通過率が落ちる。「即戦力の30代後半」は評価されるが、「40代での未経験職種へのチャレンジ」は厳しいことが多い。
30代のうちに「次のキャリアの種を仕込む」行動をしておくことが、40代の選択肢を広げる。
40代:「価値の再定義」——実績を方法論に変える時期
40代になると、「まだ転職できるか」という不安を持つ人が増える。でも問い方が間違っている。
正しい問いは「私は何を再現できるか」だ。
40代が評価されるもの・されないもの
評価されるもの
- 「自分がやったことで、組織がどう変わったか」を語れる実績
- 特定の業界・顧客層における深い関係性と信頼
- マネジメント経験の「再現性ある方法論」(「なんとなくやった」は評価されない)
評価されにくいもの
- 「20年のキャリアがある」という年数だけ
- 特定の会社でしか通用しない「社内用語・社内ルール」への精通
- 「若い頃は数字が取れた」という過去の武勇伝
40代での転職・評価において鍵になるのは、「自分が何をしてきたか」ではなく「自分がいると何が起きるか」を語れることだ。
40代の現実的なキャリア路線
事業開発・アライアンス パートナーとの関係構築・外部連携・新規事業の立ち上げは、人脈と経験が直接価値になる領域だ。現職で培ってきた業界知識と関係性を活かせる。
VP of Sales・セールスディレクター 組織を持つポジション。マネジメント経験がある人向け。中堅・スタートアップ企業でのVoS需要は継続してある。
フリーランス・業務委託 営業コンサルタント・セールストレーナー・アドバイザーとして独立するルートも現実的になっている。一社に縛られない働き方を選ぶ40代は増えている。
年代を超えて共通する「一つのこと」
20代・30代・40代で戦略は違う。でも、全年代に共通して大事なことが一つある。
「自分の言葉で、自分のキャリアを語れること」だ。
面接でも、社内でも、顧客との会話でも——「自分はこういう人間で、こういう経験をして、だからこういう価値を出せる」と淀みなく語れる人は強い。
これは年齢に関係ない。20代でも、40代でも、「自分の物語を持っている人」が市場で選ばれる。
地図は描いた。あとは、自分が今どこにいるかを確認する作業だ。
俺も、20代の頃は全く見えていなかった。30代で迷走した。40代になって初めて「自分が地図を持っていなかった」と気づいた。
だから今、お前たちに先に渡しておく。
参考文献
- マイナビ「転職動向調査2025年版」(2025年)— 転職率・転職後年収データ
- リクルートワークス研究所「プレイングマネージャーの実態調査」(2019年、n=2,183)
- JACリクルートメント「職種別年収実績値」(2024年)
よくある質問
- Q20代のうちにやっておくべきことは何ですか?
- スキルの種まきです。特定の業界・職種に絞りすぎず、「営業プロセスの全体像」「CRMなどのツール」「業界知識」を複数持つことが30代以降の選択肢を広げます。転職率が高い20代男性(13.4%)にとって、転職は珍しいことではありません。
- Q30代での転職は年収が上がりますか?
- マイナビの転職動向調査(2025年版)では、転職後の平均年収は+22万円という結果が出ています。ただしこれは平均値で、専門性が低い場合や業種転換の場合は年収が下がるケースもあります。30代転職は「スキルを正しく市場評価してもらう」ための情報収集が最重要です。
- Q40代での転職は難しいですか?
- 「誰にでもできること」ではなく「この人にしかできない再現性」を示せるかどうかで大きく分かれます。20〜30代の経験を体系化し、未来の組織にどう貢献できるかを具体的に語れる40代は、マネジメント・事業開発・アドバイザリー職で評価されます。
ジン
41歳フィールドセールス VP
20年以上の現場経験。エンタープライズ大型商談の修羅場をくぐってきたから言える、長期視点のキャリア論。