SaaS営業と従来型営業——同じ『営業』で年収が2倍違う理由
SaaS営業と従来型営業では平均年収に大きな差がある。なぜ差がつくのか、商材・利益率・OTE構造を分解し、プレイド1,040万円の事例を含めて転職前に知るべき現実を解説する。
編集部
俺も、最初は「SaaS営業って何が違うの?」って思っていた。
営業は営業だろ、売れれば一緒だろ——そう思っていた時期が正直ある。でも数字を見たとき、ぞっとした。同じ営業職で、年収が2倍近く違う。
これは運じゃない。構造の違いだ。今日はそれを正直に話す。
「同じ営業」で年収が2倍違う、その実態
まず数字から入ろう。
SaaS企業の年収データを見ると、規模感が伝わる。xenoBrain(2024年)のデータによれば、SaaS企業の年収1位はプレイドで1,040万円。上位企業が軒並み700〜1,000万円台に名を連ねている。
一方、従来型の無形商材営業(保険・人材・広告)の平均年収は400〜600万円台が中心だ。有形商材(メーカー・商社)はさらに低い場合も多い。
もちろん比較は条件をそろえないといけない。同じ経験年数・同じ職位で比べたとき、SaaS企業の方が年収が高くなりやすい構造的な理由がある。それを解説する。
なぜSaaS営業は年収が高いのか——3つの構造的理由
1. 商材の粗利率が高い
SaaSの粗利率は一般的に**70〜80%**と言われている。物を作ったり、倉庫に置いたり、配送したりするコストがほとんどかからない。
従来型の有形商材だと粗利率は20〜40%が相場だ。売上1億円でも、残る利益は2,000〜4,000万円。SaaSなら7,000〜8,000万円残る計算になる。
利益が多ければ、営業への報酬に回せる原資が大きくなる。営業へのインセンティブ設計に余裕が生まれる——これが年収差の根本だ。
2. OTE(On-Target Earnings)構造
SaaS企業では「OTE」という概念で報酬設計されることが多い。
OTEとは、目標を100%達成したときの想定年収だ。ベース給与+インセンティブの合計で提示される。たとえば「OTE 900万円(ベース600万円+インセンティブ300万円)」という形だ。
目標を超過達成すれば、OTEを上回ることも珍しくない。逆に未達なら、ベースのみになるリスクもある。この設計が、成果を出せる人に有利に働く。
従来型の営業は固定給+小さなインセンティブ(あるいはインセンティブなし)が多いため、どれだけ売っても報酬に反映されにくい。
3. 契約単価とLTVの大きさ
SaaSは月次・年次の継続課金モデルだ。一度受注すると、解約されない限り毎月売上が積み上がる。企業にとって顧客の生涯価値(LTV)が大きいため、顧客を獲得する営業の価値が高く評価される。
また、エンタープライズ向けSaaSでは年間1,000万〜数億円の契約も珍しくない。大型商談を担当できる営業は、当然報酬も高くなる。
SaaS営業と従来型営業——仕事内容の違い
年収だけでなく、仕事の中身も違う。
| 項目 | SaaS営業 | 従来型営業 |
|---|---|---|
| 商材 | ソフトウェア(無形) | 有形商材/保険/広告など |
| 営業スタイル | IS→FS→CSの分業制が多い | 一気通貫が多い |
| 使うツール | Salesforce/HubSpot/Gong等 | 名刺管理・Excel中心 |
| 成果の計測 | KPI・SFA管理・週次レビュー | 結果(売上)重視 |
| 必要スキル | ロジック・データ読み・プロセス | 関係構築・根性・勘 |
| リモート | 可能が多い | 訪問必須が多い |
SaaS営業は「プロセス管理型」だ。なぜ売れたのか、なぜ失注したのかを分析し、再現性を高める思考が求められる。感覚や根性よりも、数字とロジックで話す文化がある。
従来型から転職して最初に戸惑うのは「なんでも数値化して話す文化」だという声が多い。慣れれば自分の成長を客観視できて働きやすいが、最初はしんどいと感じる人もいる。
SaaS営業に向いている人、正直なチェックリスト
俺自身がどん底から這い上がったのは、自分の仕事を「数字で語れる」ようになったからだった。それはSaaS的な思考だったと、後から気づいた。
以下のチェックリストを見てほしい。
向いている人
- なぜ受注できたか・失注したかを言語化できる
- ツールを使うことに抵抗がない(Salesforceなど)
- 商材を深く理解して説明することが好き
- 数字の目標に向かってプロセスを組み立てられる
- フィードバックをポジティブに受け取れる
一方で向いていないかもと感じる人
- 「気合と根性で売ってきた」が唯一の武器になっている
- 顧客との飲み会・ゴルフが得意だが、それ以外の営業を経験していない
- 新しいツールや仕組みへの適応に時間がかかる
向いていない特徴に当てはまったとしても、絶対に無理ではない。ただ、入社後に意識的に変えていく努力が必要だということだ。
プレイド1,040万円の事例——何が起きているのか
改めて、xenoBrain(2024年)のデータでSaaS企業年収1位のプレイドの話をしたい。
プレイドは「KARTE」というCXプラットフォームを展開するSaaS企業だ。エンタープライズ向けの大型契約を中心とし、顧客単価が高い。
1,040万円という数字は、全社平均もしくは特定役職の平均として出ているデータだ。「営業職だけで全員が1,000万円」ではないことは注意してほしい。
ただし、SaaS企業でパフォーマーとして実績を積めば、30代前半で800〜1,000万円台に届く可能性は現実にある。従来型営業に10年いてもそこに届かないケースと対比すると、構造の違いの大きさがわかる。
転職前に準備する3つのこと
「じゃあSaaS営業に転職したい」となったとき、準備なしで動くのはもったいない。俺が転職活動を支援してきた経験から言うと、以下の3つをやっておくかどうかで内定率が大きく変わる。
1. 現職での実績を数字で整理する
「売上を上げた」では弱い。「前年比120%、チームトップの成績を3四半期連続で維持した」「新規開拓で月20件アポを取り、コンバージョン率30%を達成した」という形で語れるように整理する。
SaaS企業の採用担当は数字に慣れているため、数字のない自己PRはぼやけて見える。
2. SaaS・プロダクト知識の基礎を学ぶ
転職先候補の企業のプロダクトを実際に触る(無料トライアルがあれば使う)。競合との違いを自分なりに整理する。「なぜこのプロダクトを売りたいのか」を言語化できると、面接の印象が格段に変わる。
3. MEDDICなどのフレームワークを習得する
MEDDIC(Metrics・Economic Buyer・Decision Criteria・Decision Process・Identify Pain・Champion)はSaaS営業で広く使われる商談管理フレームワークだ。名前を知っているだけでなく、自分の営業プロセスに当てはめて説明できると「SaaS営業的な思考を持っている」と見なされる。
年収の差は、能力の差だけじゃない。構造の違いだ。同じ努力をするなら、より大きく報われる場所を選ぶ——それは合理的な判断だ。
転職は手段であって、目的じゃない。でも「なぜここにいるのか」を問い直すきっかけにはなる。
参考文献・出典
- xenoBrain「SaaS企業年収ランキング 2024年版」(2024年)
- JACリクルートメント「営業企画職 平均年収データ」
- マイナビ「転職動向調査 2025年版」
- Salesforce「State of Sales Report」(営業担当の非営業業務割合)
よくある質問
- QSaaS営業は未経験から転職できますか?
- できます。ただし完全未経験よりも、既存営業で数字を出した実績があると採用されやすい。インサイドセールス(IS)経由でSaaS企業に入り、フィールドセールスに異動するルートが現実的な入口です。
- QSaaS営業の年収はどれくらいですか?
- 企業規模・経験によりますが、3〜5年目で500〜800万円台が中心です。外資系SaaSや成長期スタートアップでは、OTE(インセンティブ含む想定年収)が1,000万円を超えるポジションも存在します。プレイドは2024年のデータでSaaS企業年収1位の1,040万円が記録されています。
- Q従来型営業からSaaS営業に転職するデメリットはありますか?
- あります。まずSaaS企業は業務理解・プロダクト知識が求められるため、入社後のキャッチアップが必要です。また成果連動の報酬設計なので、立ち上がりが遅い場合は当初年収が下がるリスクもあります。インセンティブ込みのOTE提示を鵜呑みにせず、ベース給与も必ず確認してください。
- QOTEとは何ですか?
- On-Target Earningsの略で、目標達成時の想定年収です。ベース給与+インセンティブ(100%達成時)の合計額で提示されることが多い。目標未達の場合はベースのみになるため、OTEとベース給与の両方を確認することが重要です。
ハル
35歳営業企画マネージャー
テレアポ300件/日の時代から、AI活用で月次戦略を回す立場へ。どん底を知っているから、リアルな話しかしない。