フィールドセールス完全ガイド——仕事内容・年収・向いている人を解説

FSの仕事内容・IS・CSとの違い・OTE構造・年収500〜1,000万円超の実態をジンが解説。転職方法まで網羅した完全ガイド。

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編集部


俺はフィールドセールスで20年以上やってきた。

商談の場で相手の表情が変わる瞬間、「それ、いきましょう」という言葉を聞く瞬間——それが今でも好きだ。理屈で説明できる仕事の楽しさじゃなくて、対面ならではの密度がある。

今日は、そのフィールドセールスという仕事を丸ごと解説する。転職を考えている人も、就職先として検討している人も、これを読めばFSの実態がわかる。

フィールドセールスとはどんな仕事か

FSの仕事を一言で言えば「商談を動かして、クロージングまで導く」ことだ。

インサイドセールスが育てたリードを受け取り、対面・オンラインで商談を進め、提案・デモ・見積もり・交渉を経て契約を取る。それがフィールドセールスの核だ。

具体的な業務の流れ:

  1. リード受け取り・事前調査: ISまたはマーケからリードが渡される。商談前に相手の会社・業界・課題仮説を調べる
  2. 初回商談・ニーズヒアリング: 相手の課題を丁寧に聞き出す。ここで仮説の精度を上げる
  3. 提案書作成・社内調整: 相手の課題に合った提案書を作る。価格・条件・スコープの社内調整も行う
  4. デモ・プレゼン: プロダクトや提案内容を実際に見せる・説明する
  5. クロージング: 決定者の懸念を解消し、「やる」という意思決定を促す
  6. 契約交渉・ネゴシエーション: 条件・価格・スケジュールをすり合わせる
  7. ハンドオフ: 契約後、CSやカスタマーサポートに顧客情報を引き継ぐ

このサイクルを複数案件並行して回すのが、FSの日常だ。

IS・CSとの違い——3職種の役割分担

SaaSの分業モデルでよく使われる「IS・FS・CSトリオ」の役割を整理する。

職種主な役割求められる特性
IS(インサイドセールス)リード育成・アポ獲得・ハンドオフ量を管理する・トークの型を守る・速度
FS(フィールドセールス)商談・提案・クロージング判断力・複雑な状況への対応・決断を促す力
CS(カスタマーサクセス)オンボーディング・継続・拡大長期視点・関係構築・問題解決

ISは「量と速度」、FSは「深さと判断」、CSは「関係と継続」——それぞれ求められる能力が根本的に違う。

転職を考えるとき、「自分はどの役割に充実感を感じるか」を基準にすると選びやすくなる。

FSの求人市場——東京集中と地方の現実

フィールドセールスの求人は東京に集中している。

全国のFS求人は約15,000件(2025年時点の主要求人サイト集計ベース)のうち、東京集中率は約80%(12,000件)。インサイドセールスの東京集中率63%(全国19,000件中12,000件)より、さらに高い。

FSは商談のための「移動」が発生する職種だ。大手企業・エンタープライズ企業が集中する東京での需要が高いのは構造的な理由がある。

地方在住でFSを目指すなら、以下の選択肢がある:

  1. リモート型FSのポジションを選ぶ: SaaS系ではオンライン商談が標準化しており、フルリモートのFSも増えている
  2. 東京勤務前提で転職活動する: 年収・機会の面で、東京拠点のポジションが有利なケースが多い
  3. 地方密着型の業種(建設・不動産・医療機器)でFSを選ぶ: 地方にも一定数の求人があり、業界知識が強みになる

年収レンジ——OTE構造の理解が鍵

FSの年収は「OTE(オン・ターゲット・アーニング)」で理解することが重要だ。

OTE構造の基本

OTEとは「目標を100%達成したときの年収総額」だ。

例:

  • OTE 700万円(固定350万円 + 変動350万円)
  • 目標100%達成 → 700万円
  • 目標130%達成 → 固定350万円 + 変動455万円 = 805万円
  • 目標70%達成 → 固定350万円 + 変動245万円 = 595万円

変動給の比率が高いポジションほど、達成すれば高収入・未達なら収入が落ちる。

職種・ターゲット層別の年収帯

ポジション年収目安
SMB向けFS(中小企業担当)400〜700万円
ミッドマーケットFS600〜900万円
エンタープライズFS700〜1,000万円超
プレイングマネージャー(FSチーム)800〜1,200万円

SaaS企業のエンタープライズFS(大企業向け)では、目標達成時に1,000万円を超えるケースは珍しくない。扱う案件の規模が大きい分、クロージングの難易度も高い。

FSに向いている人

正直に言う。FSは誰にでも向いている仕事ではない。

向いている人の特徴

  • 「決断を促す場面」が好きな人: クロージングの局面で「やりましょう」を引き出す瞬間に達成感を感じられる人
  • 複数の利害関係者を動かすことに充実感がある人: エンタープライズでは決裁者・現場担当・技術者など複数人が商談に関わる。この複雑さを楽しめる人
  • 移動・変化のある日常を好む人: 外勤・商談・移動が日常になる。同じことの繰り返しより変化が好きな人
  • 状況に応じて柔軟に対応できる人: 事前の準備が崩れることが頻繁に起きる。即興での判断・対応が苦にならない人

向いていない人の特徴

  • 毎日同じリズムで仕事したい人: 商談の数・移動先・相手の反応は毎日変わる。予測不可能な変化が続く
  • 数字が出るまでのプロセスに確認が欲しい人: FSは成果(受注)が出るまでの中間評価が少ない。プロセス管理は自己責任になる部分が大きい
  • 不確実な結果に耐性がない人: 自分が良い提案をしても、相手側の予算・タイミング・意思決定者の変更で案件が消えることがある

FSへの転職方法——実際のルート

FSへの転職は大きく3つのルートがある。

ルート1: IS→FS

最もよくあるルートだ。ISで商談対応・ハンドオフの経験を積んだ後、「商談全体を担当したい」という動機でFSに移る。

アピールポイント: 顧客課題の把握力・トークスクリプト設計経験・CRMの活用実績

ルート2: 異業種営業→FS

製造業・小売・保険など、別業種の営業経験からFSへの転職。業界知識が強みになる。特に、IT・SaaS系に転職する場合は「業界経験のある人材」として採用されやすい。

アピールポイント: 業界知識・既存の人脈・対面商談の経験

ルート3: コンサル・SE→FS

技術的な知識を持つ人材がFSになると、「技術課題をビジネス言語に翻訳できる」強みが出る。特にSaaS・ERPなど複雑な製品のFSでは重宝される。

アピールポイント: 技術的理解・プレゼン力・論理的な提案構成

転職活動で意識すること

  • 求人票の「年収表記がOTEか固定給か」を必ず確認する: OTEと固定給を混同すると、入社後に実態と違うと感じるリスクがある
  • クロージング経験を具体的なエピソードで語る準備をする: 「いくら達成したか」より「どうやって達成したか」が面接で問われる
  • 担当する顧客層(SMB・ミッドマーケット・エンプラ)を絞って転職先を選ぶ: 顧客層によって仕事の性質が大きく変わる

FSは「対面の力」を信じる人間にとって、やりがいのある仕事だ。AIが普及しても、複雑な判断・感情的な意思決定への対応は、当面人間の強みが残る領域だと俺は思っている。

参考文献

  • 主要求人サイト(doda・リクルートエージェント)集計データ(2025年時点)
  • xenoBrain「SaaS企業年収調査」2024年
  • リクルートワークス研究所「営業職調査」2019年
  • パーソルキャリア「IS求人数調査」2022年(IS東京集中63%・全国19,000件中12,000件)

よくある質問

Qフィールドセールスとインサイドセールスの違いは何ですか?
ISはオンライン・電話での顧客対応が中心で、リード育成からアポ獲得・ハンドオフまでを担います。FSは商談・提案・クロージングを対面・訪問で進める役割です。ISが『量と速度』、FSが『深さと判断』を担うのが一般的な分業です。最近はリモート商談の普及でFS・ISの境界が曖昧になってきています。
Qフィールドセールスへの転職で有利なバックグラウンドは?
IS・インサイドセールス・コールセンター経験からFSへの転職はスムーズです。顧客課題の把握・クロージングへの理解が面接で評価されます。また、業界知識(SaaS・医療・金融など)がある人材は即戦力として採用されやすい。
QOTE(オン・ターゲット・アーニング)とは何ですか?
目標を100%達成した場合の年収総額です。『OTE 800万円(固定400万円+変動400万円)』という場合、目標達成で800万円になります。130%達成なら変動部分が増えてOTEを超える収入になります。求人票の年収表記がOTEかどうかを必ず確認してください。
QエンタープライズセールスとSMBセールスの年収差はどのくらいですか?
大きな差があります。SMB(中小企業)担当FSの年収は500〜700万円が一般的ですが、エンタープライズ(大企業・大型案件)担当FSでは800万円〜1,000万円超もあります。案件単価が高い分、クロージングの難易度も高く、複雑な利害関係者調整が求められます。
Qリモートワークはフィールドセールスでも可能ですか?
以前より増えています。SaaS系のFSではオンライン商談が標準化しており、フルリモートのFSポジションも存在します。ただし、エンタープライズ向けの大型案件では対面商談が依然として重視されるケースが多く、完全リモートは限られます。求人票で『訪問頻度』を確認することを推奨します。

ジン

41歳

フィールドセールス VP

20年以上の現場経験。エンタープライズ大型商談の修羅場をくぐってきたから言える、長期視点のキャリア論。