営業の72%が『本来の仕事』をしていない——Salesforce調査が示す衝撃の現実
Salesforceの調査では営業担当者の72%が非営業業務に時間を奪われている。書類・社内調整・データ入力に追われる現実と、AIで本来の営業に集中できる未来を解説する。
編集部
「ハル、最近どれだけ営業できてる?」
同期にそう聞かれて、一瞬答えに詰まった。32歳のとき、マネージャーになって半年が経った頃の話だ。
顧客と話している時間って、本当は何時間あるんだろう。日報書いて、上の承認待って、Excelを更新して、社内メールに返信して……。気づいたら夕方になってた、なんて日が続いてた。
それ、あなただけじゃない。データが証明している。
営業担当者の72%が「本来の仕事」をしていない
Salesforce社が世界の営業担当者を対象に実施した調査「State of Sales」によると、営業担当者が実際に顧客との対話や提案活動に使っている時間は、就業時間全体の28%に過ぎない。
残り72%は何に使っているのか。
- データ入力・CRM更新
- 社内報告書・日報・週報の作成
- 承認フロー・稟議の処理
- 社内調整メール・会議への参加
- 提案資料の作成・修正
- 競合情報・市場リサーチ
「それ、別に普通じゃない?」と思った人は、立ち止まって考えてほしい。
あなたの会社は、顧客に価値を届けるために営業を雇っているはずだ。その営業が7割以上の時間を社内業務に使っているとしたら、それは構造的な損失だ。組織としても、個人としても。
なぜこれが「今」問題になっているのか
この問題は昔からあった。でも今、二つの意味で臨界点に来ている。
一つ目は、競合がAIを使い始めたこと。
同じ商圏の競合他社が、AIで提案書を5倍速で作り、顧客への連絡を自動化し、最適なアプローチタイミングを分析している。一方で自分は手作業で日報を書いている——これは戦闘力の差として直接、受注率に出てくる。
二つ目は、顧客の要求レベルが上がったこと。
情報が溢れる時代に、顧客は「勉強不足な営業」に時間を使いたくない。事前にリサーチ済みで、課題をすでに整理してくれていて、自分に合った提案を持ってくる営業だけに会う価値を感じる。これに応えるには、準備に時間をかけられる環境が必要だ。
つまり「72%問題」は、今すぐ自分事として向き合うべき話になっている。
AIが「取り戻してくれる」時間とは何か
では、AIは具体的にどの業務を肩代わりできるのか。現時点で実用レベルに達している領域を整理する。
議事録・商談メモの作成
商談中の会話を録音・テキスト化し、要点を自動まとめするツール(TLDVやOtterなど)は、すでに国内でも導入が進んでいる。30分の商談のメモを手書きで書くと15〜20分かかるが、ツールを使えば確認・補足だけで5分以内に完了する。
メール・提案文のドラフト作成
顧客情報と課題をインプットすれば、商談後のフォローメールや提案書のたたき台をClaude・ChatGPTなどで生成できる。「ゼロから書く」のではなく「直す」作業になり、文章作成にかかる時間が半分以下になるケースは多い。
CRMへのデータ入力
Salesforce・HubSpot等の主要CRMは、AIによる自動入力・自動分類機能の実装が進んでいる。商談ノートから自動でフェーズ・金額・ネクストアクションを更新するような機能も登場しており、手作業入力の大幅削減が現実になりつつある。
社内報告書の自動生成
週次・月次の売上レポートや進捗報告は、データさえ揃っていれば定型文化しやすい。テンプレートとデータ連携を整えれば、報告書作成がゼロになる組織も出てきている。
試算すれば、これらで週10〜15時間の削減が可能なケースは珍しくない。週10時間といえば、1日2時間の顧客対話時間を新たに確保できる計算だ。
「本来の営業」に集中できると、何が変わるか
時間を取り戻した先にある話をしよう。
本来の営業とは何か。俺は「顧客が言語化できていない課題を、一緒に掘り出すこと」だと思っている。
顧客は「予算がない」と言う。でも本当は「この投資の正当性を上に説明できない」だったりする。「他社も検討している」と言う。でも本当は「決め手が何かわからないでいる」だったりする。その深層にある本音を引き出せる営業は、数字が取れる。そして、この作業は絶対に人にしかできない。
この「引き出し」に集中できる環境を意図的に作れた人は、AI時代に淘汰される側ではなく、評価が上がる側に回れる。
逆に「AIが使えない」「事務作業しかできない」という人は、AIが事務作業を肩代わりし始めた瞬間に価値を失う。その危機は、すでに始まっている。
今から変える3つのアクション
「わかった、でも何から始めれば?」という人に向けて、現実的な3ステップを提示する。
アクション1: 自分の業務時間を「見える化」する
まず1週間、自分の業務ログを取る。Googleカレンダーでも手書きメモでもいい。「顧客対話」「提案準備」「社内業務」の3分類でいい。
「本当に顧客と話している時間」が何時間あるか、計測したことがない人がほとんどだ。数字を見れば、問題意識が変わる。
アクション2: 最も時間がかかっている事務作業を1つ選んでAI化する
業務ログを見て、最も繰り返し性が高く、最も時間がかかっている業務を1つ選ぶ。議事録作成なら録音ツール、メール作成ならChatGPT、報告書作成なら定型テンプレート化。一気にやろうとしない。1つ変えるだけで、最初の成功体験になる。
アクション3: 浮いた時間を「顧客理解」に使う
時間が浮いたら、即座に別の事務作業を埋め込まない。意識的に「顧客について考える時間」に充てる。前回の商談で引っかかっていたことを深堀りする。業界ニュースを読んで顧客の文脈を理解する。次回の商談の仮説を立てる。
この「考える時間」が、長期的に営業の質を決める。
AIが「できない」ことは、これからのあなたの武器になる
AIは確かに速い。でも、人の心の動きを読むことはできない。沈黙の意味を察することも、雑談から信頼を積み重ねることも、苦境にある顧客の隣に立ち続けることも、AIには無理だ。
72%の時間を奪われていたあなたが、その時間をAIに渡して取り戻す。そして取り戻した時間で、AIには絶対にできないことをやる。
それが、これからの営業の生き方だ。
俺も今、その移行の途中にいる。完璧な答えはないけど、方向は間違いなくそっちだと思っている。
参考文献
- Salesforce「State of Sales(第6版)」(2022年)— 営業担当者の業務時間分析
- 経済産業省「DXレポート2.1」(2022年)— 日本企業のデジタル化と業務効率の関係
- McKinsey Global Institute「The economic potential of generative AI」(2023年)— 職種別AI自動化可能性分析
よくある質問
- Q営業担当者が一番時間を取られている非営業業務は何ですか?
- Salesforceの調査では、データ入力・報告書作成・社内メールや調整業務が上位に挙がっています。これらは繰り返し性が高く、AIや自動化ツールが最も効果を発揮しやすい領域です。
- QAIを使えば残業が減りますか?
- ツール選定と運用次第ですが、実際にAIを活用している営業チームでは議事録作成・メール文案作成・CRM入力などで週数時間の削減を報告しています。ただし導入初期の学習コストはゼロではありません。
- Q営業職はAIに仕事を奪われますか?
- ルーティン的な事務処理は自動化が進みますが、顧客との関係構築・複雑な課題の発掘・感情に寄り添った提案は人にしかできません。むしろ非営業業務をAIに任せ、本来の営業に集中できる人が高く評価される時代になります。
ハル
35歳営業企画マネージャー
テレアポ300件/日の時代から、AI活用で月次戦略を回す立場へ。どん底を知っているから、リアルな話しかしない。